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BLEACHからエグり出す「師匠のポエム」を格調高く英訳した【連載】トイアンナの超人気マンガ英語塾

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出典: 久保帯人(2001年)BLEACH 集英社

こんにちは、トイアンナです。

有名マンガ作品から英語を学ぶシリーズ、今回は禁断の作品『BLEACH』から師匠のポエムを超訳英語にして解説していきます。

『BLEACH』は累計発行部数8,200万部という化け物レベルに売れている少年漫画です。当初は「クールな秀才肌の主人公」という少年ジャンプらしからぬ主人公、黒崎一護がばっさばっさと敵である虚(ホロウ)をやっつける小気味よいマンガでした。しかし次第に漫画の、というよりは作者の「ポエム」が有名になってゆきます。

師匠のポエムとは

『BLEACH』のコミックスを購入すると、開いてすぐに必ず作者のポエムが掲載されています。このポエムがなんとも絶妙で、中2だと超カッコいい! と痺れるのに大学生あたりから枕に顔をうずめて足をバタバタさせたくなる恥ずかしさを孕んでいます。あまりのセンスに作者は「師匠」と呼ばれ、ファン以外のもはや『BLEACH』を読んでいない層ですら、ポエムを楽しみにする始末。

今回はそのhigh senseなポエムから、懐かしい連載初期の逸品を3点ご紹介しながら英語力も身につけてほしいと思います。では声に出して読みたくない英語の授業、スタート!

第1巻

まずは記念すべき、第1巻のポエムから。

我等は 姿無きが故に
それを畏れ

ひゅー! カッコイイ! 現在の苦労を重ねすぎてやや老けた一護より、幼さの残る表情が覗くのも可愛いですね。早速ですがこちらが超訳英語です。

We, because of their invisibility,
Get awed of them.

★ 超訳英語のポイント

○ We, because of their invisibility(我等は 姿無きが故に)
この順序でテストに書いたら必ずバツになるであろう語順、これが今回のポイントです。普通の文章では主語(We:私たち)の後にすぐ動詞(Get awed:畏怖する)を持ってくるのがルール。

しかしあえて「姿無きが故に」に当たる because of their invisibilityを先に持ってくることで「畏怖の感情を抱いてしまったせいで、怯えてまともな英語で伝えることができない」というニュアンスを持たせることができます。

○ awe(畏怖させる)
あまり見かけない単語かと思いますが「オウ」と発音して「誰かを畏れさせる」という意味になります。この動詞だけだと相手を畏怖させてしまうので、受身の文法(Get 動詞-ed もしくは Be 動詞-ed)で元の意味である「畏れる」にしました。

第5巻

次は避けては通れない盟友、チャドのポエム。

剣を握らなければ おまえを守れない
剣を握ったままでは おまえを抱き締められない

I cannot save you without holding my sword.
But wearing it means, I cannot hold you.

なおこのポエムのテーマとなったキャラクター、チャドは剣で戦っていません。設定を超えてなお燦然と輝く師匠のポエム、そこに痺れる憧れるゥ!

★ 超訳英語のポイント

○ holding my sword(剣を握る)
通常英語で剣は「着る」ものです。ですから正しくは wear にすべきなのですが、それでは「剣を握る―お前を抱きしめる」の対の関係が崩れてしまうので剣にも hold を使いました。

○ hold you(お前を抱きしめる)
「剣を握る」と「お前を抱きしめる」の対の関係を強調するために「お前を抱きしめる」英語もholdを使います。通常英語では、できるだけ同じ言葉を避けるのがマナーですが、あえて繰り返すことで hold my sword (剣を握る)とhold you(お前を抱きしめる)の関係を強調できます。

第7巻

最後は第7巻に掲載されている、このフレーズ。

我々は涙を流すべきではない
それは心に対する肉体の敗北であり
我々が心というものを
持て余す存在であるということの
証明にほかならないからだ

なんてこった。このヘヴィーな中2心のグルーヴ感。ズンッ、ズンッとクラブミュージックの重低音が心に響くぜ。もはやキャラクターとあまり相関性はないポエムなのですが、著者は「師匠」なんでもうどうでもいいです。

We should never shed tears.
That is a defeat of our bodies against our souls.
It’s nothing else but a proof
That we cannot manage our souls.

★ 超訳英語のポイント

○ shed tears(涙を流す)
cry(泣く)はよく見ることがあると思いますが、これは「声を上げてワンワン泣く」に近い動詞です。涙を流すという動作には「無音」が付きまといます。そこでshed tearsという動詞を採用しました。

○ souls(心)
英語には、4つの「心」を表す単語があります。heart, mind, spirit, そして soulです。そしてこの違いは大きく下記で分かります。

heart  → 感情的な「心」。たとえば失恋は heart brakingです。
mind  → 頭脳で感じる「心」。たとえば「心構え、覚悟」をmindsetと言います。
spirit → 精神。開拓者精神はpioneer spiritになります。
soul  → 魂です。

本来であれば感情的な心(涙を流したい気持ち)に対してなのでheartでもいいのでしょうが、今回は死神漫画、とくに魂が重要視されている物語なので「soul」と表記しました。

ここまで、『BLEACH』の魅力を徹底的にポエムの観点から見てきましたがいかがでしょうか。私は恥ずかしくて死にそうです。師匠のポエムは笑われることも多い反面、カッコつけたい中2心を満たしてくれる最高の作品でもありました。現在最終章に突入していますが、このまま完結したらいつか、巻頭のポエムだけ集めて、発売してくれないかなぁ……と願っています。


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